音楽好きなら、良い音で音楽を楽しみたいと思いますよね。
しかし、良い音とは、一体どんな音のことをいうのでしょうか?
値段の高いオーディオ機器を買えば、良い音が得られるのでしょうか?
それとも、信頼できるオーディオメーカーなら、良い音が出るでしょうか?
「良い音」とは一体何なのか、その正体をお伝えします。
良い音とは?
結論から言うと良い音とは、「自分好みの音のこと」です。
「原音忠実」というオーディオ業界のマーケティング用語がありますが、たとえ、いくら原音に近い音でも、自分の好みに合わなければ、「良い音」には感じません。
低域と高域が強調されてた、いわゆるドンシャリの音が好きだとか、中域が強調された音が好きだとか、角の取れたまろやかな音が好きだとか、好みの音は人それぞれ違います。
ですから、人によっては、100万円するオーディオセットから出る音より、1万円程度のBluetoothスピーカーの音の方が良い音に感じるということも十分にあり得るのです(値段を知らせずにブラインドテストを行えば)。
ここで重要なのは、個人個人の嗜好、つまり「好み」です。
その「好み」というものは、どのようにして形成されるものなのでしょうか?
私たち人間の好み、つまり「何かを好きになる」明確な理由や条件は、自分自身でも解明できないことが多いということが研究でわかっています。
人は、「なぜそれを好きなのか?」と聞かれると、それらしいことを答えるものですが、好みは様々な要因が複雑に絡んでいるので、論理的に説明するのは、ほぼ不可能なことです。
好きな理由を明確に答えたとしても、それは好きな理由を、後付けで推測して語っているだけであり、本当の理由は分からないのです。
しかし、好きになることと強力な因果関係にある条件というものは存在します。
それは、何度も見たり触れたり聞いたりすることです。
人は、物でも人でもなんでも、馴染みのあるものが好きになるものなのです。
「単純に何度も接していると好きになる」という心理効果は、アメリカの心理学者ロバート・B・ザイアンスが「単純接触効果」と名付けて提唱したので、広く世に知られています。
ですから、音の好みも、普段聴いている音、普段使っているオーディオ機器の音を好きになる可能性が高いのです。
そのため、高音質と謳っているオーディオ機器であればあるほど良い音(好みの音)に聴こえるという単純な図式は当てはまらないのです。
その一例として、普段、圧縮音源であるMP3を聴いている学生に、CDの音とMP3の音のどちらが良い音か、ブラインドテストで比べてもらった実験があります。
MP3は、CDよりも単純にデータ量が少なくなるので、音質の上では低下しているといえるのですが、学生はCDの音よりも、圧縮音源であるMP3の音の方が良い音だと感じる人が多かったといいます。
このように、私たちは普段から慣れ親しんでいるものを好むものなのです。
良い音とは普段なじんでいる音
良い音に聴こえるというのは、好みの問題であって、人それぞれ違います。
そして、その好みは生まれ持って決まっているものではありません。
好みというのは、経験や学習によって形成されるものなのです。
ですから、子供の頃に聞いていた音や、家にあったオーディオセットの音、あるいは、いつも音楽を聴いているオーディオ機器などと音の特性が近い音を好きと感じる可能性は高いでしょう。
そして、そのような音は、自分にとって心地よく、良い音に感じる可能性が高いのです。
良い音と、性能や値段との間には、相関関係はないのです。
以上のことを踏まえれば、オーディオ機器を買うときは、レビューを頼りにするのはナンセンスです(個人個人好みが違うため参考にならない)。自分の耳で確かめるのが一番です。
また、たとえ複数の機器について聴き比べをしなくても、良い音に感じたら、それ以上選択肢を広げずに、それを選べば失敗することはないのです。
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